君の隣が、いちばん遠い



「ねぇねぇ、羽柴さん」


紗英ちゃんが急に割って入った。


「接客班のほう、今柊が代わりに動いてくれてるよ。あと、これって別に班とか関係なく、みんなで助け合うって話だったよね?」

「そうそう。ていうか羽柴さん、張り合うポイントそこじゃないっしょ」


柊くんの軽口に、羽柴さんは一瞬口をつぐんで、それから小さく笑った。


「そっか、ならいいんだけどさ。がんばってね、佐倉さん」


そして彼女はふわりと踵を返し、接客班のエリアに戻っていった。

その場に残ったわたしは、少しだけ息を吐いて、紗英ちゃんに小さく微笑んだ。


「……ありがとう」

「いいの。友達でしょ」





その日の夕方。

わたしは文具店のバイトに向かった。


制服からエプロンに着替え、静かな店内に並ぶペンやノートを整える。

気持ちを切り替えようとしても、教室でのざわめきがまだ頭に残っていた。