君の隣が、いちばん遠い



自然な連携と冗談交じりの会話が飛び交うなか、雰囲気はとても和やかだった。

そこに、羽柴さんが現れた。


「へえー、なんか楽しそうじゃん。ずいぶん盛り上がってるね」


その声に、空気が一瞬止まる。


「羽柴さん、おつかれー」


柊くんが軽く声をかけるも、羽柴さんの視線はまっすぐわたしに向いていた。


「佐倉さんって、吉岡くんと仲良いんだね。文化祭の準備でもずっと一緒にいるし」

「え……いや、そういうんじゃ……」

「そういうって、なに? 別に、疑ってるわけじゃないんだけどさ」


羽柴さんの笑顔には毒がなかった。でも、その無邪気さがかえって刺さる。


「それより、接客のほう、そろそろ交代じゃない? あんまりこっちにばっかり集中してると、他の班に迷惑かかるかもよ?」

「……私は、割り振られた作業をやってるだけだよ」


わたしの声は静かだったが、どこか震えていた。