一ノ瀬くんは自然に笑いかけている。
羽柴さんはにこりと返しつつ、ふとわたしのほうを一瞥した。
目が合った──ような気がして、すぐにわたしは視線を逸らした。
その視線の意味が、わからなかった。
昼休み、わたしの席に紗英ちゃんがやってくる。
「ねえ、文化祭の衣装さ、ちょっと相談したいんだけど」
「うん……どんなの?」
「ナチュラル系っていうか、カントリー調がいいなって思って。フリルも控えめで。どう思う?」
「……似合いそう。さえなら」
「ありがとう。ひよりも、きっと似合うよ」
そうやって笑ってくれるのが嬉しくて、わたしはほんの少しだけ笑顔を返す。
そのやり取りを、遠くから柊くんが見ていた。
「なんだ、最近ふたり、めっちゃ仲いいじゃん。なんか嫉妬するわ」
「柊くんは、いつも誰とでも仲いいから」
わたしがそう言うと、柊くんは「それは照れるな」と言って笑った。



