朝のHRで、文化祭の話が持ち上がった。


秋の空気がまだ夏を名残惜しんでいるような教室の中。

教壇に立つ久遠先生が、にこやかに言う。


「今年の文化祭は、うちのクラスも出し物をやるからね。なにをやるか、今から意見出してみよう」


 教室がざわつき始める。

 誰かが「お化け屋敷!」「メイド喫茶!」「占い!」と好き勝手に叫び、笑い声が広がる。


「多数決で決めるから、思いついた人は黒板に書いてー」


結局、最後に残ったのは「カフェ」。

理由は「衣装がかわいい」「飲食のほうが盛り上がる」「女子がやる気出す」といったシンプルなものだった。


自然と拍手が起き、文化祭の準備が本格的にスタートした。





役割分担の紙が配られる。


わたしの名前は「内装・飾りつけ班」にあり、その隣にあったのは吉岡くんの名前だった。


予想通りというか、安心というか。

お互い、必要以上の会話をせずとも、作業はうまく進みそうだった。