「わたし、かき氷食べたい!」
「金魚すくいチャレンジしようぜ」
「じゃあ、誰が一番すくえるか勝負?」
小さな冗談と笑い声が、夏の夕暮れの空気に溶けていく。
わたしも、その中に自然と溶け込んでいた。
りんご飴を選ぶ紗英ちゃん。
焼きそばを2本抱える柊くん。
金魚すくいで失敗する一ノ瀬くんに、小さく笑うわたし。
屋台の灯りが、4人の顔をオレンジ色に照らしていた。
わいわいと騒ぎながら、でもどこか安心する時間だった。
「そろそろ花火の場所、探さない?」
柊くんの提案に、紗英ちゃんがにやっと笑う。
「そうだねー。あ、柊、私こっちの屋台気になる!一緒に来て!」
「え、今!?まあ、いいけど……」
紗英ちゃんがぐいっと柊くんの腕を引っ張っていく。
その場には、自然とわたしと一ノ瀬くんの二人だけが残った。
さっきより少しだけ、静かな時間が流れる。



