君の隣が、いちばん遠い



「浴衣いいじゃーん!ほら遥、感想言え、感想」


急に話を振られた一ノ瀬くんは、口を開きかけて、一度言葉を飲み込んだ。


「……似合ってる。すごく」


その声は少しだけ小さくて、けれど真っ直ぐだった。


「なにそれ~ちょっと照れてるじゃん!」


紗英ちゃんがすかさずツッコんで、わたしの背中を軽く押した。

その瞬間、顔が自然と熱くなった。


「ありがとう……」


わたしは小さな声で返す。


こういう空気に、まだ慣れてはいない。

でも、嫌ではなかった。


「よし、それじゃまず何食べる!?」


柊くんが勢いよく声を上げた。


「えー、いきなり? まずは順番に回ろうよ」


紗英ちゃんが呆れたように笑いながら言い、わたしと一ノ瀬くんもくすっと笑う。


「じゃあ、あっちの通りから見てこう」


一ノ瀬くんが提案し、4人で並んで歩き始めた。