わたしが静かに返すと、柊くんがちょっと驚いたように目を丸くした。


「おっ、佐倉さん、ちゃんとツッコミ返してくれた!」

「おまえ、いちいち反応オーバーだって」


一ノ瀬くんが笑いながらツッコむ。


「だってよー、普段の佐倉さん、静かだし。今日はけっこうしゃべってるしさ……なんか、良い」


柊くんが素直に言ったその一言に、わたしはちょっと照れて視線をそらした。


「それって、一ノ瀬が横にいるからじゃない?」


今度は紗英ちゃんが、おちゃらけたように突っ込んだ。


「ん?」


一ノ瀬くんが少しきょとんとすると、柊くんが笑いながら言う。


「いや、マジでそうだと思うよ。それにおまえだって、佐倉さんの前だと、結構“素のまま”じゃん」

「そうかな?」

「そうだよ。なんかさ、学校での一ノ瀬遥って“完璧優等生”みたいなイメージあるじゃん。でも佐倉さんの前だと、ちょっとだけダメなとこ見せてる」


その言葉に、一ノ瀬くんが少し照れくさそうに笑った。