「お母さん、すごく綺麗な人だね」
「……ありがとう。よく言われる」
「……でも、ちょっと、怖かった」
そっと打ち明けた。
彼は少しだけ目を伏せて、笑った。
「俺も、怖いよ。たまに、だけどな」
その笑顔は少しだけ寂しそうで、でもどこか救われたようでもあった。
「……ありがとう。正直に言ってくれて」
わたしたちは、夕暮れの街をまた並んで歩き出した。
少しだけ距離が縮まった気がする。
でも同時に、彼の中にある“見えない重さ”を、わたしは確かに感じ取っていた。
まぶしすぎる人の影。
それは、ただの羨望では終わらない何かを、ふたりの間に残していった。



