その日、空は澄んだ青を広げていた。

風はほんの少しだけ涼しく、夏の午後とは思えないくらい心地よかった。


わたしは、一ノ瀬くんと並んで歩いていた。


約束していたわけではない。

けれど、自然と「今日はどこか行こうか」という流れになっていた。


ゆったりとした時間が流れる街の歩道。

カフェでお茶をした帰り道、わたしたちは商店街の裏手にある静かな並木道を選んだ。


「このあたり、久しぶりに来たかも」


彼がつぶやく。


「……ここ、好き」


わたしは並木の葉が風に揺れる音を聞きながら、小さく笑った。


「佐倉さんって、夏休み、岸本とかと遊んだりしてる?」


不意に聞かれて、わたしは少し考え込むように首を傾けた。


「ううん……クラスのみんなと遊んだあの日以来、特には……」

「そうなんだ」


一ノ瀬くんが歩幅を緩めて、わたしの顔をちらりと見る。