君の隣が、いちばん遠い



そのあと、わたしたちは近くのカフェに立ち寄った。


夏限定のフルーツティーを注文して、窓際の席に座る。

外の光に、ガラスの器がキラキラと輝いていた。


「こんなふうに過ごす夏って、初めてかもしれない」

「佐倉さんって、夏苦手そうだよね」

「……バレてた?」

「うん、なんとなく」


わたしたちは笑った。


「でも、今日みたいな日は、好きかも」

「そう言ってもらえて、よかった」


店内にはゆるやかな音楽が流れ、隣のテーブルでは、親子連れが楽しそうに話している。

ふと、わたしはスマホを取り出した。


「さっき撮った写真、ちょっと見せて」

「うん。これとか」


画面に映るのは、並んで歩いた木陰の道。

同じ時間を過ごしたことが、こうして形になることに、わたしは少し驚いたような顔をした。


「きれいだね……なんか、映画のワンシーンみたい」

「ほんとだ。……俺たち、けっこういい感じじゃん」

「ふふっ、なにそれ」


静かな時間が、ふたりのあいだに溶け込んでいく。

言葉がなくても、居心地が悪くない。


そのことが、いちばんの答えだった。