夕方、ボウリング場で最後の一勝負。

わたしは遠慮しがちにしていたが、柊くんや紗英ちゃんが明るく背中を押してくれた。


「ひよりー! この際、ガーターでもいいから投げよう!」

「岸本、もうちょっと言い方考えて」

「うそうそ、ひよりのフォームめっちゃきれいだから大丈夫!」


投げたボールはゆっくりとレーンを転がり、思ったよりも多くのピンを倒した。


「おおーっ、ナイス!」


拍手が広がり、わたしは恥ずかしそうに笑った。


……来てよかった、かも。


帰り道、皆で並んで歩きながら、夕焼けが空を染めていく。

柊くんがイヤホンを片耳に差しながら、ふと一ノ瀬くんに言った。


「お前、佐倉さんと話すとき、ちょっとテンポ変わるよな」

「……そうか?」

「うん、なんか“優しい感じの自分”が全開っていうか」


一ノ瀬くんは少し照れたように笑い、言葉を濁した。

わたしはそれを聞きながら、前を向いたまま、胸の奥がほんのり熱くなるのを感じていた。


夏の夕暮れ、ゆっくりと影が伸びていく道。

その中に、自分の居場所が少しだけ見つかったような気がしていた。