暑さが本格的になり始めた、七月下旬。
蝉の声が朝からけたたましく響く中、夏休み初日の朝は、どこか気だるい空気に包まれていた。
わたしは、まだ寝間着のまま、部屋のカーテンを少しだけ開けて空を見上げた。
真っ青な空と、もくもくとした入道雲。その光景に、胸の奥が少しだけざわついた。
……夏休み、か。
特に予定もなく、ただ日々を静かに過ごすはずだった。
例年と同じように、図書館で過ごして、バイトをして、家ではなるべく気配を消して。
そうやって、過ぎていくはずだったのに。
スマホが小さく震える。
画面をのぞくと、“一ノ瀬遥”くんからのメッセージだった。
《佐倉さん、クラスのグループLINE、招待してもいい? ちょっとした夏の計画、動いてるみたい》
数秒、画面を見つめたまま、わたしは動けなかった。
クラスの、グループ……
通知のたびに何人かの名前が増えていき、スタンプや挨拶、そして本題のやり取りが流れていく。



