家に帰ると、美帆ちゃんがソファに座ってテレビを見ていた。

「おかえり、ひより」

「ただいま」


制服のままリビングを通り過ぎようとしたとき、美帆ちゃんがぽつりと言った。


「最近、ちょっと変わった?」

「え?」

「なんか、表情がね。前よりやわらかくなった気がする」


言葉に詰まりながらも、少しだけ笑って答えた。


「そう、かな……自分では、よくわからないけど」

「うん。いい意味で、だよ」


そのやりとりが、なぜかうれしかった。


——少しずつでも、変われてるのかな。


自室に戻り、スマホを手に取った。


《明日、また例の場所で》

一ノ瀬くんからのメッセージだった。


わたしは、画面を見つめながら、そっと息を吸った。


「……明日も楽しみ」


そう小さくつぶやいて、勉強机のライトをつけた。

その声には、誰に聞かせるでもない、でも確かに期待に胸を躍らせていた。