その日の帰り道。
スマホに一通のメッセージが届いた。
《今日はどうする? ちょっとだけ、寄り道できるなら。》
差出人は一ノ瀬くん。
——ちょっとだけ、なら。
そう思い、わたしは返信を打った。
《うん。大丈夫》
わたしたちの会話は、もう“自然な日常”になっていた。
放課後のカフェ。
窓際の席で並んで座るわたしたち。
ミルクティーの湯気が立ち上り、静かな店内に流れるピアノの音が、やわらかく耳に入ってくる。
「これ、おいしいね」
「うん、前より甘さ控えめにしてみた」
そんなやりとりの中で、わたしの表情には、以前よりもずっと柔らかい笑顔が増えている気がする。
カフェを出て歩く道すがら、ふとした拍子に手が触れそうになった。
お互い、何も言わない。
でも、それが心地よかった。



