君の隣が、いちばん遠い

 

午後の練習。


一ノ瀬くんの気配を背中に感じた。

でもわたしは、先に一歩だけ後ろに下がった。


視線を避けるように、声を遠ざけるように。


そうすることで、自分を守っていた。

 

練習が終わった夕方、グラウンドに長く影が伸びる。

彼の背中が、少し遠くに見えた。


わたしは少し遅れて教室に戻り。

静かな教室、西日に照らされた机の上に、プリントを置いた。

 

ふと窓の外を見ると、階段の踊り場に立つ彼の姿があった。

スマホを見て、何かを打ちかけては、消している。


わたしも……話せばいいのに。

そう思ったとき、自分でも驚いた。


誰かに“話したい”と思っていることに。