夜が深くなって、わたしは自分の部屋に戻ると、棚の奥にしまってあったアルバムを開いた。

幼稚園のころの写真、小学校、中学校……そして、高校。


遥くんと写っている写真を見て、胸がじんわりとあたたかくなる。

クリスマス、文化祭、修学旅行、塾帰り、河原のベンチ……どれも、かけがえのない時間だった。


「……ちゃんと、前に進んでいこう」


わたしはそっとページを閉じて、カバンの中に一枚だけ。

プリントしておいた思い出の写真を忍ばせた。


それは、去年の冬に撮った、2周年記念のツーショット写真。


明日から始まる新しい生活。

そこに、今までのすべてを持っていくわけにはいかないけれど、大切なものは、ちゃんと心にしまってある。


電気を消した部屋の中で、ベッドに潜り込む。

暗闇の中で、そっと目を閉じた。


たぶん、これからも迷うことはあると思う。

自信がなくなる夜も、不安になる日も。

でも、あたたかな声を思い出せば、わたしは何度でも歩き出せる。


「おやすみ、美帆ちゃん」

「……おやすみ、ひより。明日、ちゃんと起きなよ」


ふたりの声が、廊下越しに交差して、また静かな夜が戻ってきた。


明日からはじまる、新しい日々。

それを迎える準備は、もうできている気がした。