夕食が終わってから、美帆とふたりでこたつに入った。
テレビの音は小さくて、お互いの息づかいがよく聞こえるくらい、静かな夜。
「……なんか、変な感じだよね。明日からひより、いないなんて」
「わたしも、まだ信じられないかも」
「でもさ、ちょっとだけ思ってたよ。ひよりって、ここに収まる人じゃないって」
「え?」
「先生になるんでしょ? なら、もっといろんな経験したほうがいい。人の気持ちってさ、いろんな景色とか、感情とか、苦しさとか、嬉しさとか、そういうの知ってる人にしか、寄り添えないと思うから」
「……美帆ちゃん」
美帆ちゃんはいつだって、こうだった。
わたしにいろいろなことを気づかせてくれる。
「ちょっとだけ、お姉ちゃんになったんだよ。まあ、私は昔からひよりのお姉ちゃんだけどね」
「ちょっとだけ、じゃないよ。すごく、なってる」
ふたりで笑いあって、そのまましばらく無言でこたつに入っていた。



