駅を降り、試験会場に向かう学生たちの列の中に、自分も自然と溶け込んでいく。
周囲から聞こえる小さな会話や緊張した足音。
そのどれもが、この日に向けて積み重ねてきた努力の証のように感じられる。
歩きながら、ふとこれまでの時間がフラッシュバックする。
塾の帰りに、何度も遥くんと一緒に歩いた道。
図書室で並んで解いた問題。
久遠先生に相談して、書き直した志望理由書。
あの日、推薦入試に落ちて泣いた夜。
わたしの隣には、いつも誰かがいてくれた。
あのときの涙は、悔しさでも、悲しさでもあった。でも、今はちがう。
「わたし、もうひとりじゃない」
心の中で、そっと呟いた。



