君の隣が、いちばん遠い



『おはよう。わたしも、今向かってる。大丈夫、わたしもがんばる。また夜、連絡するね。』


返信を打って、スマホをポケットにしまう。

画面が暗くなった後も、その言葉の余韻はわたしの中に残り続けた。


わたしと遥くんは、同じ会場で受ける。

だけど、本番中は連絡を取らない。


お互いの集中を大切にしようって、前に話して決めていた。


——頼りたい気持ちはある。でも、頼りすぎちゃいけない。


そんなふうにお互いを尊重できる関係になれたことが、わたしは誇らしいと思ってる。


電車の中では、問題集を広げたりはしなかった。

無理に詰め込むよりも、今は心を整えたい。


窓に映る自分の顔が少し引き締まって見えるのは、気のせいじゃないと思いたい。