冬の朝は、どうしてこんなにも空気が澄んでいて、胸の奥がきゅっとなるんだろう。
目覚ましが鳴るよりも早く、わたしは目を覚ました。
まだ窓の外は薄暗くて、静まり返った部屋に自分の呼吸の音だけが落ち着かなく響いている。
今日は——共通テスト本番。
何度もカレンダーに赤い丸をつけてきたこの日が、とうとうやってきた。
「……よし」
声に出して自分を鼓舞する。
いつもの制服にマフラー、厚手のコートを羽織り、家族に「行ってきます」と告げて玄関を出た。
まだ寝ぼけ眼の美帆ちゃんが、こたつに入りながら「ファイト」とだけ呟いてくれたのが、ちょっとだけ嬉しかった。
駅に向かう道すがら、LINEの通知が鳴った。
画面を開くと、「おはよう。会場向かってる。がんばってこようね。終わったらまた話そう」くんからのメッセージがあった。
『おはよう。会場向かってる。がんばってこようね。終わったらまた話そう』
思わず口元がゆるんだ。



