「んー……寝たい。たぶん三日くらい寝続けたい」

「それ、わかる……」


二人で小さく笑う。

そういうくだらない会話が、今はとても愛おしい。


「でもさ」


わたしが言いかけると、遥くんが少しだけ体を傾けて、わたしの方を見た。


「……そのあと、ひよりと映画とか行きたい」


その言葉に、心のどこかがふっとあたたかくなった。


「行こう。ぜったい」

「うん、ぜったい」


ふたりの間で交わされた約束は、小さな希望であり、目標でもあった。


わたしたちは違う大学へ進む。

でも、そこには「終わり」ではなく、「続き」がある。


「どこに行っても、わたしたちはわたしたちだね」


わたしがつぶやくと、遥くんは少し照れくさそうにうなずいた。


「うん。場所なんか関係ない。ひよりとなら、何があっても大丈夫な気がする」


彼の言葉は、わたしの中でじんわりと沁みていく。