彼は何も聞かず、ただ手を差し出してくれた。

わたしは、その手をぎゅっと握った。

寒さで少し冷たくなっていたけれど、指先のぬくもりは、ちゃんとわたしの手の中に届いた。


「行こっか」

「うん」


ふたり並んで歩き出す。冬の夜道、街灯が道を淡く照らすなか、わたしたちの影が並んで伸びていく。

白石くんの言葉は、重たくもあたたかく、胸の奥に静かに沈んでいた。


そして、それでも今、隣にいるのは遥くんだった。

これから先も、きっとそうであってほしいと、強く思う。