彼は何も聞かず、ただ手を差し出してくれた。
わたしは、その手をぎゅっと握った。
寒さで少し冷たくなっていたけれど、指先のぬくもりは、ちゃんとわたしの手の中に届いた。
「行こっか」
「うん」
ふたり並んで歩き出す。冬の夜道、街灯が道を淡く照らすなか、わたしたちの影が並んで伸びていく。
白石くんの言葉は、重たくもあたたかく、胸の奥に静かに沈んでいた。
そして、それでも今、隣にいるのは遥くんだった。
これから先も、きっとそうであってほしいと、強く思う。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…