「ずっと気づかないふりしてたの、わたし。ごめんね」

「いや、謝られるようなことじゃない。俺が勝手に好きになって、勝手に納得しただけだから」


白石くんは、息を吐いて前を向いた。


「……それでも言っておきたかったんだ。きっと、伝えなきゃいけない気持ちだったから。でないと、次に進めない気がしてさ」

「……うん」

「佐倉さんが頑張ってるのも、ちゃんと見てたし、応援してた。そういうところも好きだったんだ。これからも、応援してる。一ノ瀬と幸せにな」


その言葉に、わたしは静かに微笑んだ。


「ありがとう。ほんとに」

「じゃあ……そろそろ、戻ろっか。大事な人、待たせてるでしょ」


白石くんの声に、わたしはもう一度だけ頭を下げた。

彼の横をすり抜けて、自販機の前へと戻った。


遥くんは、自販機の横に寄りかかって、缶コーヒーを手にしていた。

わたしの姿を見ると、すっと姿勢を起こす。


「……話、終わった?」

「うん」