でも、わたしの隣には、遥くんがいる。
声をかければすぐに顔を上げてくれて、わからないところは丁寧に教えてくれる。
特別なことはないけれど、この“並んでいる”という時間。
それが、今のわたしたちにはいちばん必要なことなんだと思えた。
午後三時すぎ、休憩の時間になった。
こたつから立ち上がった遥くんが台所で何かを用意し始める。
「何してるの?」
「ちょっとね、これ作ってみたかったんだ」
そう言って差し出されたのは、手作りのホットココアだった。
マグカップのふちには、マシュマロが浮かんでいる。
「……わ、かわいい」
「成功かは分からないけど、味見してみて?」
湯気の立つココアを一口飲んだ。
少し甘めで、あたたかくて、心まで溶けそうだった。
「おいしいよ。ありがとう」
そう言うと、遥くんはちょっと照れたように笑った。



