翌日。

わたしは筆箱とノートを持って、久しぶりに遥くんの家を訪ねた。


玄関先で「こんにちは」と声をかけると、彼のお母さんが顔を出してくれる。


「いらっしゃい。こたつ、つけてあるから、風邪ひかないでね」


わたしは思わず、「ありがとうございます」と深く頭を下げた。


リビングのこたつに入って、わたしたちはまた参考書を開く。

たまに目が合えば、小さく笑って、でもすぐに真剣な顔に戻る。


夜の九時過ぎ。

ふたりとも集中力が切れてきたころ、ふと窓の外にきれいな星空が見えた。


「冬って夜空がきれいだよね」

「うん。そうだね。星がよく見える」


ベランダに出ると、冬の澄んだ夜空に、まん丸の月と無数に輝く星があった。

頬に冷たい空気が当たり、でも、隣にいる彼の存在がそれを帳消しにしてくれる。


「綺麗だね」

「……来年も、こうして一緒にいられるかな?」

「いられるよ。きっと。来年も、再来年も」


その言葉を信じたかった。

そして、信じられる気がした。


わたしたちは、違う場所を目指している。

でも、目指す理由も、支え合ってきた時間も、ちゃんと重なっている。


離れても、隣にいるような気持ちでいられる。

――そんなふたりで、いられる未来を信じていた。