――雪の気配が混じる風が、制服の裾を揺らすようになった十二月。

季節が冬になったことを、カレンダーではなく体感で知るようになった頃。

わたしは再び毎日を“受験生”として過ごしていた。


わたしたちは、勉強漬けの日々だった。


朝は自宅のこたつの上で問題集を広げ、午後は塾へ。

ときには図書館で、あとはカフェで。


それでも飽き足らず、帰宅後には英単語を覚えながら眠りにつく。

そんな毎日だった。


わたしの進路は、文系の教育学部。

遥くんは、理系の建築学部を目指している。


志望校は違う。大学も別々。

だから、これからは今よりももっと隣にいられなくなる。


――わたし、本当にこのままで大丈夫なのかな。

ふと、そんな不安がよぎる夜が増えた。


すれ違う時間、重ならない志望校、別の勉強内容。

そのすべてが、わたしたちの距離まで変えてしまうんじゃないかと、不安になることがある。