夜のリビングは、いつもより静かだった。

テレビはついていたけれど、誰も真剣には見ていない。


わたしは、ダイニングテーブルに座って温かい麦茶をすする。

けれど、味なんて、何も感じなかった。


「……どうだった?」


その声に顔を上げると、美帆ちゃんが立っていた。

ソファの背もたれに寄りかかって、じっとわたしを見ている。


「うん……ダメだった」


それだけ言って、また視線を伏せた。

落ちた、って言葉は、何度言っても胸の奥がざらりと削られる。


「そっか……」


美帆ちゃんは、わたしの隣の椅子に座った。

それから、少しの沈黙のあと、ため息まじりに言う。


「まあ、推薦って倍率高いしね。十五倍とか言ってたでしょ?落ちる人のほうが多いんだから、仕方ないって」


わたしはかすかに笑って、でも返事はしなかった。


「でもさ」


美帆ちゃんが言葉を継ぐ。