わたしも、震える指でメッセージを打った。
『紗英ちゃん、柊くん、おめでとう!』
言葉に嘘はなかった。
本当に、ふたりとも努力していたし、嬉しい気持ちだってあった。
でも、どこかで比べてしまう自分もいた。
わたしは、落ちた。
ふたりは、受かった。
その違いが、今の自分の“価値”みたいに思えて、苦しくなる。
それでも、メッセージを送って、スマホをそっと伏せた。
「……わたし、ちゃんとがんばったよね」
声に出したその言葉が、ようやく胸の奥に届いた。
そうだ。悔しい。悲しい。悔しい。
でも、やれることは全部やった。
今度は、一般受験でがんばるしかない。
まだ終わっていない。
そう思いながら、わたしは机の上にノートを広げた。
手元の筆箱を開けると、中に入っていた写真が少しだけ覗いた。
遥くんと撮った、小さなプリクラ。
また、あの笑顔で隣にいたい。
その想いが、わたしを机へと向かわせた。



