わたしが出会った久遠先生のように。
誰かの“きっかけ”になれるような人になりたい。
この気持ちだけは、まっすぐに届けたいと思った。
「ありがとうございました」
面接官がそう告げたとき、わたしは小さくお辞儀をして、部屋をあとにした。
廊下に出た瞬間、足が軽く震えた。
すべてを出しきった、という感じはしない。
けれど、これが“いまのわたしのすべて”だった。
数週間後。
冬の気配が濃くなってきたある日、結果通知が届いた。
放課後、家に帰ると、ポストに大学名の入った封筒が入っていた。
その瞬間、心臓が跳ね上がる。
指先がかじかんで、うまく封を切れなかった。



