「……あのときのわたし、こんな顔してたんだ」
写真の中の自分は、少し照れて、でも確かに嬉しそうに笑っていた。
机の上には、過去のノートや模試のプリントも重なっていて、その隙間にある一枚のメモに目がとまった。
《人は、自分の歩いた道しか振り返れない》
久遠先生が授業で言った言葉。
あのとき、わたしはこの言葉をそっと書き留めていた。
今、わたしはちゃんと、自分の足で歩いてきたのかな。
迷いながら、悩みながら、それでもここまで来た。
その証が、いま目の前に広がっているノートと紙たち。
――ピロン。
スマホの通知が鳴った。LINEだった。
遥くんからだった。
『明日、がんばってな』
『緊張すると思うけど、ひよりなら大丈夫だって信じてる』
『ちゃんと見てるよ。がんばってるの、わかってる』
スクロールして、もう一行。
『応援してるから』
画面の文字が、にじんで見えた。



