夜、自分の部屋に戻ると、再び書きかけの志望理由書に向き合った。
「人の心に寄り添えるような、そんな教師になりたいと思っています」
その一文を、もう一度読み直す。
本当に、わたしにできるのか。
わたしなんかが、そんな仕事を目指していいのか。
でも、そう思ったとき、遥くんの言葉が胸によみがえった。
――お互い、全力でいこう。
たったそれだけの言葉に、どれほど救われたか。
スマホの画面にある、ロック画面のふたりの写真。
この一年、ふたりで積み重ねてきた時間。
そのすべてが、わたしの背中を押してくれている。
「よし」
わたしはペンを握り直した。
明日も、全力でやろう。
たとえ結果がどうであれ、この選択に、後悔だけはしないように。
それが、わたし自身にできる、一番の約束だった。



