「ひより、頑張ってるの、俺は知ってるから。後悔だけは、しないように。結果がどうでも、全力でやったって胸張って言えるようにしようぜ」
彼が、まっすぐにわたしを見ていた。
いつのまにか、涙が出そうになっていた。
「うん……ありがとう」
その一言しか言えなかったけれど、それで十分だった。
帰り道、秋の夕日が道を茜色に染めていた。
遥くんと並んで歩くのは、本当に久しぶりだった。
最近は、わたしが学校に残って面接練習をしていたり、塾の個別授業が増えていたりして、すれ違いが多かった。
「最近、ひよりががんばってるの、ちょっとだけ寂しかった」
ぽつりと彼が言った。
「……うん。わたしも。なんか、一緒にいる時間が減っちゃって」
「でも、だからこそ、こうして話せる時間がすごく貴重に思える」
「……わたしも、そう思ってた」
わたしたちは、そのまましばらく言葉もなく、歩いた。
横を通る自転車のライトが、わたしたちの影を長く伸ばしていった。



