一方、わたしは久遠先生に呼ばれて、久しぶりに職員室を訪れていた。


「佐倉、最近どうだ?」


先生の変わらない穏やかな声。

でもその問いに、今日はしっかりと自分の言葉で答えたかった。


「先生……わたし、教育学部を目指してがんばろうと思っています。ほかは考えてません」


そう伝えると、先生は一瞬目を見開いてから、にっこりと笑った。


「そっか。……その顔を見ると、きっと自分で決めたんだなって、わかるよ」

「はい。夏休み、たくさん悩んだし、いろんな人と話をして……でも、やっぱり国語が好きで、誰かの力になれる先生になりたいって思ったんです」

「それは、きっと正しい悩み方だったんだと思うよ」


先生はそう言って、デスクの引き出しから一枚の紙を取り出した。

それはわたしが3月の終わりに出した進路希望調査のコピーだった。