八月の空が、少しだけやわらかくなってきた。


それでも日差しはまぶしい。

蝉の声はまだ夏の終わりを認めようとしないように、勢いよく鳴いている。


だけど、ふと吹く風にほんのわずかな涼しさが混じっているのを感じる。

そのたびに、夏はもう終わりに近づいているのだと思い知らされる。


「今日で、夏期講習も終わりか……」


塾の帰り道、わたしはふぅっと大きく息を吐いた。


毎日が目まぐるしかった。

家と塾と学校を行き来して、遥の家で勉強したり、模試や課題に追われて、手帳のページが文字で埋まっていく。

そのたび、時間が加速していくようだった。


それでも、何かが少しずつ、変わっていた。

変わっていく日々の中で、ちゃんと足元に、残っていくものもあった。