その日の夕方。
勉強を終えて帰ろうとしたとき、玄関先で待っていた遥くんのお母さんが、わたしに小さな包みを差し出した。
「これ、よかったら持っていって。お茶菓子、少しだけど」
「え、ありがとうございます……!」
「ひよりさん、本当にありがとうね。遥のこと、これからもよろしく」
その言葉に、わたしは何度もうなずいた。
目の奥がじんわりと熱くなるのを感じながら、「こちらこそ」と、心から伝えた。
ああ、ようやく、家族に迎え入れられた気がする。
その日の夜。
塾へ向かうと、教室の入り口近くで白石くんとばったり会った。
「……よう」
「こんばんは」
「あ、今日も授業ないのに自習室? ってか、よく頑張るよな、佐倉さんって」
「そうかな……。でも、白石くんこそ、よく見かけるよ?」
「お互いさまだな」
そう言って笑う彼は、以前よりどこか落ち着いて見えた。



