君の隣が、いちばん遠い



「だから、進路のことでずっとぶつかってた。……夫は、もう認めてるみたいだけど、私は……どうしても、踏み切れなかったの」


お母さんの瞳が、少しだけ潤んで見えた。

わたしはしばらく黙ったあと、机の上のペンをそっと置いて、口を開いた。


「わたし、遥くんが建築の道に進みたいって話をしてくれたとき、正直……少し驚きました。でも、どこか納得もできたんです。彼、昔から何かを作るのが好きだったって」

「ええ……そうね。子どものころは、よく積み木で複雑なものを作ってた。あの子のおじいちゃんが設計士だったから、きっと憧れてたんだと思う」

「お父さんの跡を継がなきゃって、悩んでたって言ってました。でも――」


わたしは、一息ついてから、目を見て言った。


「“あの人のように誰かを支えることよりも、自分で何かを作りたいんだ”って、そう思ったんだって」


お母さんは、はっとしたように目を見開いた。


「……それ、遥くんが、そう言ってたんです」

「……そう」


わたしはうなずいた。