夏休みも、もうすぐ折り返し。

毎日、一ノ瀬くんの家のリビングに通う生活がすっかり日常になっていた。


朝10時には玄関のチャイムを鳴らし、昼過ぎには軽い昼食をはさんで、夕方までびっしり勉強。

帰り道に一緒に買うアイスが、ささやかなご褒美だった。


最初は、緊張して足を踏み入れたこの家も、今ではふわりと心が落ち着く空間になっていた。


……お父さんには、少しずつだけど、気を許してもらえるようになった気がする。


問題集を広げて頭を悩ませているとき、ふとソファから「がんばれよ」と小さく声をかけてくれたり。

お茶を入れて持ってきてくれたり。

ぶっきらぼうだけど、言葉の端々に優しさがにじんでいて、そのたびにわたしの胸は温かくなった。


けれど、お母さんは……少しだけ距離をとっているように見えた。