「……花火、きれい」
「うん」
見上げた空に、ぱあっと大きな花火が咲いた。
色とりどりの光が、音と一緒に胸に響く。
わたしは無意識に手を伸ばして、遥くんの指に触れた。
彼は何も言わず、でも自然に指を絡めてきた。
「……なんか、変だね。こんなふうに、静かに花火見るの」
「静かなの、いいと思うよ」
また一発、大きな音とともに夜空が染まる。
その光の中で、わたしは彼の横顔を見つめた。
ずっと、こうしていたいと思った。
未来がどうなっても、彼の隣にいたいと思った。
「ありがとうね、誘ってくれて」
「こっちこそ、来てくれてありがと」
わたしたちは、言葉少なに笑い合った。
勉強ばかりの夏だけど、こんなふうに心を交わせる時間があるなら、乗り越えていける気がした。
静かに打ち上がる光を見ながら、わたしはそっと目を閉じた。
この夏は、忘れられない季節になる――そんな気がしていた。



