何日か通ううちに、空気は少しずつ変わっていった。
お母さんは飲み物を出してくれたり、アイスを勧めてくれたりして、わたしにも笑いかけてくれるようになった。
わたしも、できるだけ丁寧に「ありがとうございます」と伝えるようにしたし、休憩中にはお皿を運ぶのを手伝ったりもした。
お父さんは相変わらず多くを語らなかった。
けれど、ある日、わたしが帰り支度をしているときにふいにこんなことを言った。
「……がんばってるんだな」
その声はとても低くて、聞き取りにくいくらいだった。
でも、確かにわたしに向けられた言葉だった。
わたしは思わず立ち止まって、お父さんを見た。
新聞の向こう側に見えるその顔は、特に表情を変えていなかったけれど、それでも、わたしの胸はじんわりとあたたかくなった。
「はい……がんばってますよ」



