「お、お邪魔します……」


わたしの声は、小さく震えていたと思う。


お母さんは、柔らかく微笑んで「どうぞ」と迎えてくれた。

けれど、お父さんは無言のまま、また新聞に目を戻してしまった。


遥くんが隣で「大丈夫だよ」と小声で言ってくれたけれど、わたしの心臓はずっとバクバクしていた。


その日から、わたしたちはリビングのテーブルを挟んで、毎日のように勉強した。


数学の問題を並べて、英語の長文を読み合って、時には歴史の年号を覚えながら頭を抱えたりもした。

わたしが苦手な数列の問題をうーんと唸っていると、遥くんが消しゴムでさらりと解説を書き加えてくれた。


「こうやって見たら、意外と単純なんだよ」

「えっ……ほんとだ……」

「ほらね、理解力あるじゃん」


その言葉に、つい笑ってしまう。

うれしくて、どこかくすぐったい。