金曜日の夕方。
塾の前のほんの短い時間、遥くんと待ち合わせて駅から歩いた。
こうして二人で帰るのは、ほんとうに久しぶりだった。
「……ごめんね。最近、全然ちゃんと話せてなくて」
わたしが言うと、遥くんはふっと笑って首を振った。
「俺のほうこそ。お互い様だよ。疲れてると、気持ちが先に沈んじゃうっていうか」
「うん、わかる。それに……受験って、思ってた以上に孤独だよね」
「……ああ。たしかに」
わたしたちは、並んで歩きながら、同じようにため息をついた。
でもそのあと、わたしは空を見上げて、少しだけ口元を緩めた。
「それでもね、今はもう、進むのが怖くないなって思えてきたの」
「……どうして?」
「久遠先生がね、授業中に言ってたでしょ?“人は、自分の歩いた道しか振り返れない”って。それがずっと残ってて……。怖いけど、でもちゃんと選んだ道なら、振り返っても、悔しくないかなって」



