君の隣が、いちばん遠い



あの言葉のあとも、白石くんの態度は変わらなかった。

少しだけ、わたしが意識してしまうだけで、彼はきっといつも通り。


「志望校、決まった?」


不意に聞かれて、わたしは少しだけうなずいた。


「……一応、教育学部に」

「へえ、先生になるの?」

「まだ、そこまでは……でも、目指してみたいなって」

「似合ってると思うけどな、佐倉さん。教えるの、うまそう」

「そんなことないよ……」


恥ずかしくて、つい笑ってごまかした。


授業が終わったのは、夜の8時半すぎ。

白石くんの英語の授業が始まるまでの休み時間の間、彼と少しばかり話をした。


「一ノ瀬とは、最近どう?」


突然の問いに、足が止まりそうになった。


「……うまくいってるよ」

「そうか。……一年経ったって言ってたもんな」

「うん、去年のクリスマスで一年」

「……長いな。俺、けっこうそういうの、続かない方だからさ」

「そうなんだ?」

「まあ……どうでもいいか、そんな話」