君の隣が、いちばん遠い



放課後。

塾のある日は、そのまま駅に向かって電車に乗り込む。


いつもと同じ電車、同じ路線、同じ時間。

だけど、塾に向かう足取りは、なんとなく少し軽くなった気がした。


塾の入り口をくぐると、ちょうど前からやってくる人影があった。


「お、佐倉」

「……白石くん」


中学は一緒だったけど、そこまで深い関わりがなかった白石くん。

今では同じ塾で、特に数学の授業の前後には、よく顔を合わせるようになった。


春にあった、あの“意味深な言葉”。

直接的な告白ではなかったけれど、あれ以来、彼の言動にはどこか含みがあるように感じてしまう。


「佐倉さんは数学だけだったよな?三年も数学だけ?」

「うん、そう。同じ。白石くんは?」

「俺も同じ」


並んで靴を履き替えながら、会話はごく自然なものだった。