君の隣が、いちばん遠い



春の空気が、どこか引き締まって感じるのは、新しい学年が始まったからだろうか。

満開だった桜も、もうほとんど葉桜になりかけていて、わたしたちは三年生になった。


高校生活最後の一年。

その事実を、まだ完全には実感できないまま、わたしは新しい教室の自分の席に座っていた。


といっても、クラス替えはなかった。

進学コースのわたしたちは、去年と同じ教室で、同じメンバーと机を並べる。


でも、黒板に書かれた「三年〇組」の文字は、はっきりと今の自分の立場を告げていた。

進路希望調査票が、配られたのはその週の終わりだった。


A4の白い紙。

自分の名前と学籍番号、そして――「第一志望校」「学部・学科」「理由」という記入欄。


去年、そして春休みにずっと白紙だったその欄に、わたしは黒のボールペンを持って、そっと書き込んだ。


××大学 教育学部 国語教育専攻