君の隣が、いちばん遠い



「なんか、久しぶりだね」

「だね。塾とか、進路のこととか……お互いちょっと忙しかったし」


遥くんの声が、ほんの少しだけかすれている気がした。

わたしも頷きながら、歩き出す。


歩幅を合わせて、無言の時間をしばらく過ごす。

それだけでも、不思議と落ち着けるのが彼といるときだった。


川沿いのベンチまで、数分ほど。

誰もいないその場所に並んで座ると、わたしは手に持っていた温かいペットボトルのお茶を少しだけ握り直した。


伝えたいことが、あった。


「……実はね」


言葉が、風に消えそうで怖かった。

でも、それでも言わなきゃって思った。


「この前、国語の先生いいかもってLINEで話したでしょ?」

「うん」

「わたし、去年見学に行った大学の教育学部に志望校決めたんだ」