わたしは、白紙のままの用紙をそっと裏返した。
進路。志望校。将来の夢。
その言葉たちは、どれも遠くて、触れようとすると霧のように形が曖昧になってしまう。
この一年、たくさんのことが変わった。
遥くんと付き合って、日々の中に心の拠りどころができた。
友達と呼べる人たちと笑い合う時間も増えた。
少しずつ前に進んでる気がしていた。
でも――肝心な将来のこととなると、わたしの中には何もなかった。
帰りのホームルームが終わって、昇降口へと歩く途中。
遥くんが階段の下で待っていてくれた。
「……ひより」
「遥くん」
わたしは少しだけ驚いて、でもすぐに自然と笑みが浮かんだ。
彼の存在は、今も変わらず、わたしの世界にそっと寄り添ってくれている。



