君の隣が、いちばん遠い



遥くんがぽつりとつぶやいて、空を見上げた。

神社の境内はすでに参拝客で賑わっていて、寒いなかでも子どもたちのはしゃぐ声が響いていた。


並んでお参りをして、それぞれ手を合わせる。


――わたしの気持ちが、ちゃんと届きますように。

――これからも、隣にいるこの人と一緒にいられますように。


目を閉じながら願ったその瞬間、遥くんの手がそっと、わたしの手を握ってくれた。

神社の境内を抜けると、屋台の並ぶ道に出た。


「甘酒、飲んでいこうか」

「うん、飲みたい!」


カップを手に、ベンチに並んで腰かける。

湯気がゆらゆらと空へ昇っていった。


「……なにお願いしたの?」

「んー、それは秘密。でも、ひとつだけ言うとしたら……『この先も、ひよりと一緒にいられますように』って」


わたしは胸の奥がぎゅっとなって、でも嬉しくて顔が熱くなった。


「わたしも、似たようなこと願ったよ」

「そっか」


彼が笑って、わたしも笑った。

いつの間にか、こんなふうに当たり前のように隣にいることが、わたしにとってすごく大きな支えになっている。