君の隣が、いちばん遠い



授業中、ノートを取る手が少し震えていた。

内容が頭に入ってこない。ページをめくるたび、リングが光を反射してキラリと輝く。


「……もし、再会するのがもっと早かったら」


白石くんの言葉が、何度も頭の中で繰り返されていた。


あれは、告白じゃない。

でも、気持ちは、確かにあった。


白石くんは、いつだって真っ直ぐで、努力家で、周囲にも信頼されていた。

塾での成績もトップクラスで、講師の先生からも一目置かれていた。

そんな彼が、わたしに――。


考えてはいけないことまで、心が勝手に巡ってしまい、頭が痛くなりそうだった。


授業が終わり、外に出ると、雪がちらついていた。

駅までの道のり、寒さで肩をすくめながら、わたしはスマホを取り出した。


遥くんに、LINEを送りたくなった。


『塾、終わったよ。今日は、ちょっと疲れたかも』


すぐに「おつかれ」の返信がきた。


『寒いから、気をつけて帰って。あとで電話しよ?』


画面を見て、胸がぎゅっとなった。