君の隣が、いちばん遠い



「それでね……ちょっと、渡したいものがあって」


そう言って、わたしは鞄の中から、小さな紙袋を取り出した。

青いリボンのついた包み。

あの日、選んだブレスレットが入っている。


「……メリークリスマス。それから、一緒にいてくれてありがとう、遥くん」


初めて呼んだ、“遥くん”。

“遥くん”は、目を見開いてから、ゆっくりと微笑んだ。


「ひより、ありがとう。大事にする」


そして、彼もまた、鞄から小さな箱を取り出した。

中には、細めのシルバーリングのペアアクセサリーが入っていた。


「……こっちこそ、ありがとう。これからも、隣にいてほしい」


わたしたちは、お互いペアのものを送り合った。

そして、お互いの手を取り合って、リングとブレスレットを身につけた。


その瞬間、世界がそっと、わたしたちを祝福してくれているような気がした。


カフェを出てから、人気のない公園を歩いた。

木々の間からこぼれるイルミネーションの光が、雪の粒のように地面に映っている。


誰もいないベンチに腰を下ろし、彼と並んで座った。

風が冷たくて、肩が自然と寄り添う。