街の空気が、今日だけはいつもと違う気がした。
吐く息は白く、通りを行き交う人の顔も、どこかきらきらして見える。
きっと、それはわたしの気持ちが浮き足立っているから。
今日は、クリスマス。
それだけじゃない。
わたしと一ノ瀬くんが付き合って、ちょうど一年になる記念日。
約束の時間より少し早く駅に着いて、わたしは人波の中に彼の姿を探していた。
マフラーの中にうずめた頬がじんわり熱くなるのは、寒さのせいだけじゃない。
「……ごめん、待った?」
声がして振り返ると、そこに一ノ瀬くんがいた。
ウールのコートに包まれて、少し照れたような笑みを浮かべている。
いつもより少しだけ、髪型も整えてある気がした。
「ううん、今来たとこ」
いつも通りのセリフ。
でも、今日はなんだか特別に感じた。
「……じゃあ、行こうか」



